博報堂を辞めて「逆張り」を武器に成功した、web編集者の読書日記 – 現代ビジネス

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飲み屋で打ち合わせって、カッコいい

椎名誠さんや東海林さだおさんのようなオッサンになりたい、とずっと思ってきました。二人の何がカッコいいかって、飲み屋で編集者と打ち合わせをするところ。学生時代、私もこういう仕事をしたいと思いました。



椎名さんの本に出会ったのは、中学から高校にかけて、アメリカで暮らしていた頃です。イリノイ州の田舎町で、日本語に飢えていた時に、日本の同級生が椎名さんの本を送ってくれて、活字を読む面白さに目覚めました。ここでは一番好きな『哀愁の町に霧が降るのだ』を挙げています。

椎名さんは、ふざけたり茶化したりはするけど、決して人を見下したりバカにしたりはしない。で、自分はダサいということを出しまくるんです。

例えば、実際はモテていただろうと思うのですが、モテている奴らに対するルサンチマンを出しまくっている。これは東海林さんも同じで、林真理子さんとのある対談でモテたいという話をずっとしていて、終いには、どうしてそんなにモテることに固執するのかと林さんに不思議がられるほど。

東海林さんは作品の中でも、モテない男の僻みや嫉妬を笑いに昇華しています。だから面白いし、他人事と思えずに共感できる。食エッセイでも変わらずに東海林さんのユーモアは素晴らしく、ここでは丸かじりシリーズの第1作『タコの丸かじり』を選びました。

今、ありがたいことに、憧れていた〈飲み屋で編集者と打ち合わせをする生活〉が送れるようになったわけですが、ここまで私を導いてくれた本ということで『ウェブ進化論』を挙げました。というのも、この本のアンチテーゼである『ウェブはバカと暇人のもの』を書いて私は売れたからです。

『ウェブ進化論』は’06年に出版されてベストセラーとなり、Web2.0ブームを巻き起こしました。

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インターネットが世界を良い方向に変えるという楽観論を梅田さんが唱えたのに対し、ちょうどその頃、ニュースサイトの編集者だった私は、ちょっと待ってよと言いたくなった。

ネットによってイノベーションが起こったのは確かだし、梅田さんの言うウェブの原理にも賛同できる。ただし、梅田さんは頭の良い人だけを前提にしていると感じたんですね。

普通の人間、もっと言えばバカな人間もウェブを使うわけで、実際、炎上事件は起きるし、ネット上には誹謗中傷が日々書き込まれていた。そこで普通の人たちはどうやってネットを使っているかを現場報告として示し、ネットは必ずしもバラ色の未来をもたらしませんよと警告したわけです。

梅田さんの本ほどではないものの自分の本も売れて、執筆や連載の仕事をいただけるようになりました。

私がやったのはつまり、逆張りですが、この論は10年たった今も有効だという自負はあって、それだけに逆張りが武器になると教えてくれた梅田さんに感謝しています。以来、逆張り人生(笑)。

フリーランスの生きる心得

出版を機に、執筆の仕事が増えると、文体を考えるようになり、4人を模しました。椎名さん、東海林さん、吉田豪さん、そして浅草キッド。

浅草キッドはルポ・エッセイ『お笑い 男の星座2』が傑作だと思います。とにかく取材相手への彼らの”食い込み力”が凄いんです。余計なことまでどんどん喋らせて、意外すぎる真実を読者に突きつけてくるのに、不思議と取材相手に恨まれることはないんですよ。

特に江頭2:50さんの話が最高です。相手をバカにしているように見せて、実は心の底から愛しているのがわかるんですよね。

編集者や物書きとして、フリーランスで生きていく上で役に立ったのが『商売心得帖』でした。博報堂を辞めるときに、先輩で『考具』著者の加藤昌治さんから教えられた本です。書かれている基本姿勢は二つで、頭を垂れなさい、感謝しなさい。

易しい言葉で商いの本質を突くこの本のおかげで、今まで生きてこられました。独立する人にはオススメしたい本です。

最後に、二つ挙げた歴史作品について。一つは『三国志』。吉川英治の小説、それを元にした横山光輝さんの漫画、そして今はゲームと、一生楽しめる娯楽として最強のコンテンツだと思います。もう一つは司馬遼太郎の中で最高傑作は何だろうと考え、『国盗り物語』を選びました。理由は歴史の定説を覆しているから。

裏切り者のイメージが強かった明智光秀を、司馬遼太郎は聡明で、風流で、愛妻家の智将として描き出しました。最近は光秀の再評価が進んでいますが、そのきっかけであり白眉だろうと思います。逆張り人生の私にとってはこれが一番です。(取材・文/砂田明子)

▼最近読んだ一冊

「佐山サトル本人への粘り強い取材に加え、多数の関係者の証言をもとに、タイガーマスクの素顔に迫った本。ノンフィクションの取材の仕方をすべて教えてくれた。オレも次はこういう仕事をしたいと思い、計画中です」



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