金融庁、ICOやSTOが資金調達方法として選ばれる本質を理解しないと議論は極めて困難 – 仮想通貨 Watch

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 本稿では、11月1日に開催された金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」第8回のイベントレポート第2弾として、「ICOに関する規制のあり方」について討議された会議内容を報告する。

 なお、金融庁「仮想通貨交換業等に関する研究会」第8回イベントレポート第1弾「金融庁がICOに関する規制について討議、金融規制対象になり得るものとそうでないもの」では、討議を行う上で金融庁が報告を行った「ICOの現況とその課題」についてレポートしているので、そちらも併せて読んでいただきたい。

 第8回「仮想通貨交換業等に関する研究会」の議題は、「ICOに関する規制のあり方」について討議を行った。

 今回、金融庁が配布した資料によれば、全世界でのICOによる資金調達額について、2017年は約55億ドル、2018年は1月から7月末までで約143億ドルに達しているという報告通り、ICOについては世界的に見るとより増えているのは明らかだ。こういったICOの現状を踏まえて、ICOを禁止する国、特定のICOトークンが既存の証券規制の適用対象となり得る旨を明確化し、注意喚起等を実施する国、新たにICOに特化した規制を検討する国があることも、報告された。

ICOによる調達額上位20プロジェクト、金融庁資料より引用(以下同)

 報告を受けたメンバーからは、海外でこれだけICOによって現に資金調達が行われているという実態があるということは、やはりニーズがあるからだろうという意見が挙った。仮に社会的なニーズがあるとすれば、それを法で禁じることによってどんな影響があるのかという議論もまた必要だろうという。法によって定められているこれまでの資金調達手段ではなく、なぜICOやSTO(Security Token Offering:金融商品としてトークンを発行する方法)が資金調達方法として選ばれているのか、その本質を理解していかないと、ICOに関する議論は極めて難しいだろうという意見が冒頭で出た。

 また他のメンバーからは、ICOにはどのような可能性があり、既存の資金調達手段にない価値をどれだけ社会、あるいはビジネスに提供してくれるのか、そういった面についてもしっかりと考えていくことが重要なのではないかという意見も聞かれた。

 国際的にもそれなりにICOが用いられているのは、たとえばスピーディーかつグローバルに資金調達ができたり、あるいは中小企業やスタートアップ企業がコストをそれほどかけずに調達ができるほか、また資金調達とサービスをリンクさせた形で提供できるなど、それなりのメリットがあるからだろうというメンバーの発言もあった。そういった観点から、現時点で規制によって完全に封じてしまうにはためらいがあるという言葉が印象的だった。

 経済学の面から見た場合、ICOはコストとベネフィットの両面で考える必要があるという専門的な意見も伺えた。経済学でよく知られている話でグレシャムの法則というものがあり、要約すると「悪貨は良貨を駆逐する」といわれているが、それにICOを当てはめると、良い業者と悪い業者が共存している場合、悪い業者が支配的な立場になってしまう可能性があるという。本来、良いICOも少なからずあるが、悪いICOが存在しているとそれが支配的になってしまって、良いICOが立ち行かなくなってしまう可能性があるだろうとのこと。そういう意味でも規制は必要であり、悪い業者に良い業者が駆逐されないような制度設計が必要であるというのだ。

 またICOは、ベネフィットについても少なからずあるとのこと。特にスタートアップ企業の資金調達という側面においては国内では大きな課題であり、これまでにもベンチャーキャピタルなどいろいろ工夫はしているがうまくいっていないという実情があり、日本でのベンチャー投資は国際的な視点から見るととても少ないという結果になっているという。その解決策の1つとなり得るのがICOだというのだ。

ICOは類型によって規制を変えるべき

 ICOにて発行されるトークンはさまざまなものであるという点において、やはりひとまとめに議論するのは難しいという意見も多く聞かれた。

 発行者に対して収益の分配、配当や利子を求めることができるAsset tokens(アセットトークン)や、発行者に対して商品やサービスの提供を求めることができるUtility tokens(ユーティリティトークン)など、また、そもそも発行者が何の義務も負わないトークンもあり、これらはおのおの議論していくことが適切ではないかという。

 アセットトークンのように発行者に対して収益の分配などを求めることができるトークンに対しては、発行者にとっては明らかに資金調達手段であり、投資家が発行者より収益を得るなど投資収益を受け取ることができるものに関しては、基本的にこれはもう有価証券といっていい実質があり、発行開示、継続開示のルールに従って投資家のリスクテイクを支えていくような規制をしないといけないのではないかと考えるという。

 また現行法でもICOに関しては、まったく無法地帯ではないといえるが、現状、仮想通貨に関する資金決済法上の規制は販売業者に対する規制であり、いわゆる情報開示、発行開示、継続開示といった規制が伴わないものであることから、このままでは不十分であると思われるという意見も聞かれた。

 ユーティリティトークンについては、発行者に対して商品やサービスの提供を求めることができる権利ということなので、トークンの保有者は商品を前払いで購入したという状況とそれほど変わらないので、それだけであれば電子マネーなどの前払式支払手段と変わらないので、そういった規律を当てはめることで解決するだろうとし、有価証券での投資に対する投資者保護とはやや違った問題だと思うという意見も聞かれた。また、もしトークンを流通させるのであっても、それは仮想通貨と同じ扱いであり、前払式支払手段と仮想通貨交換業にかかる規制で問題ないだろうという意見もあった。

 ICOに類似しているサービスとして、クラウドファンディングが相対的に似ているという見方もできるというメンバーもいた。その種類が、寄付型、購入型、投資型といった3つに分けられるということも、発想として非常に似ているのではないかという。ただし、大きく違うのは、ICOというのは流通市場を通して売買できる点が大きく、クラウドファンディングにはそれがないことだろうとのこと。また、クラウドファンディングには投資という面もあるが、どちらかというと頑張ってほしいという応援や寄付の面が大きいことが観察できるという。ICOについてもそのようなことを生かしながら進めることができれば、悪質な業者を元から排除できるのではないかという意見もあり、そういう仕組み作りが大事ではないかということだった。

 そういった観点から見た場合、クラウドファンディングのように少額の投資案件であれば、それほど規制も必要ないのではとも考えられるという。ただし、リスクのわかりやすさは大事であり、たとえば金融商品であればどういう条件で価格が変動するかはみんなわかっていると思うが、ICOの分野ではそれが難しく、さらには予想不可能なリスクがしばしば発生しているので、まさかこんなことが起きるのかというようなリスクは、投資金額の大小にかかわらず、避けるべきであるという意見も伺えた。

 ICOをいわゆる金融という枠組みで考えた場合、投資型のトークンに関しては金融規制の対象であるとしても、ICOの体系的に見てユーティリティトークンなどについては金融規制の対象にはならないたろうという意見があらかたの意見のようだが、その一方で、これらを国という観点で考えるならば、恐らく今後、ユーティリティトークンを発行する発行体が増えると消費者との間に問題が発生し、その問い合わせが消費者庁に多く寄せられるのではないかという懸念もあるという。仮にユーティリティトークンなどは金融規制の射程に含めないとしても、手放しで何もしなくていいということではないと思うという意見もまた、ICOの複雑な状況について語られた意見である。

 やはりICOについては専門家にとってもその扱いが難しいようだが、本会議の討議によって議論すべき論点はかなり集約されてきているのではないだろうか。「仮想通貨交換業等に関する研究会」第8回における討議は、そんな様子が伺える会議だった。

ICOの主な事例



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