ヤフー、「カリスマ創業者」なき組織の戦い方 – 東洋経済オンライン

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今年6月に社長に就任した川邊健太郎氏(右)と、前社長の宮坂学氏(左)(撮影:今井康一)

経営陣の若返りに、成長投資の加速――。国内ネット業界の先頭を行くヤフーは今、大きな変革期を迎えている。川邊健太郎社長へのロングインタビュー、第2回のテーマは「組織」。業界には創業社長の強いリーダーシップで経営を引っ張る企業が多い中、そうでない「代替わり経営」のヤフーは何を強みに戦っていくのか。筆頭株主であるソフトバンクグループとの関係性はどう変化してきたのか。あらゆる方向から切り込んでいく。

「マシーンのように働く」からの脱却

──宮坂(学)前社長の経営体制になってすぐの頃、川邊さんは「ヤフーはこれまで、ある意味つまらない会社になっていた」と発言されていました。「PC向けサービスが盤石で、順調に利益成長しているものの、マシーンのように働いていた」と。今回の体制変更に至る過程でも、ヤフーはまた「つまらない会社になってきた」という感覚があったでしょうか。



つまらないかどうかはわからない。ただ、「スマホシフト」と「EC革命」を最優先にしていたので、そのほかの新しいサービスや事業を生み出せていなかった。幸い、きちんとスマホシフトができて、EC革命も順調なので、ここからはもっとチャレンジを増やす。それによってサービスイメージも、組織文化も活性化させていきたいという思いを持っている。

「マシーンのように働く」ことも、会社のフェーズによっては重要なことではないか。これだという事業を圧倒的に成長させるうえでは効率がいい。ただそれは今後、それこそ機械にやってもらって、人間は真に創造的で新しいこと、われわれで意思決定しないと前に進まないことをやったほうがいい。だんだん、機械と人間の役割分担をするということだ。

──役員メンバーの平均年齢も若くなりましたが、経営陣の雰囲気、そこから広がる社内の雰囲気は、この半年くらいで変わりましたか。

それはそう思う。意思決定の方針を「未来を創ろう」という方向に大きく切り替えて、その空気が少なくとも上層部にはどんどん伝わっていると感じる。加えてヤフーにとっての、所与のいろいろな課題が解決し始めたのもこれを後押ししている。たとえば株主の問題が片付いて意思決定の自由度が高まったこととか、最重要としているスマホ決済でソフトバンク、ペイティーエム(インドのスマホ決済大手)と力強いパートナーを組めたこともそうだ。

(編集部註)米ヤフーから社名変更し誕生した持ち株会社・アルタバは9月、保有するヤフー・ジャパンの全株式(発行済み株式の約35%)を売却。

経営のテーマが変わるとき、社長も代わるのが健全

──日本ではヤフー以外にも、複数の20年選手のネットベンチャーが力をつけています。ただ、楽天は三木谷浩史社長、サイバーエージェントは藤田晋社長と、カリスマ創業者が今も強力なリーダーシップのもと会社を運営するケースが目立ちます。その点ヤフーは、一定期間で経営者が代替わりする「普通の会社」にすでになっています。経営の観点で、こういう組織の強み・弱みをどう考えますか。

この質問を事前にいただいて、個人的にはけっこう感慨に浸った(笑)。というのも、僕からすると、ヤフーは今でも「孫(正義・ソフトバンクグループ会長兼社長)さんと井上(雅博・ヤフー元社長・創業者)さんの会社」という感覚が強い。一方で世の中の見方はもうそうじゃなくて、宮坂、川邊と、代を継いでいる「普通の会社」に見えつつあると。それが非常に感慨深かった。

川邊健太郎(かわべ・けんたろう)/1974年生まれ。青山学院大学在学中に起業を経験。2000年ヤフー入社。「Yahoo!ニュース」の責任者などを経て、2012年に副社長。2018年6月から代表取締役社長(撮影:今井康一)

代替わりすることの一番の利点は、やっぱり経営の「若返り」を機動的に図れることだ。未来を創るのに年齢は関係ないが、若いユーザー向けのサービスづくりには若い経営陣のほうが向いている。三木谷さんも藤田さんも非常に若々しい感性で新しいことをされている一方で、あれだけ忙しく、かつ見る範囲が広くなると、大変だと思う。競合のサービスを見て、自社のサービスを見て、実際に自分で作って、修正して……というところまでは、なかなかやりづらい面もある。その点うちは、いろいろ見なきゃいけなくなる前にどんどん若い経営者に代替わりさせちゃえるので、つねに新しい時代の感性を保っていられると思う。

デメリットは、よく言われることだが、中長期の視点での投資をしづらくなること。次の代に迷惑をかけちゃいけないとか、逆に自分の在任期間だけうまくいけばいいとか、ともするとそういう視点になりがち。ヤフーでいうと、宮坂や自分は創業期からいたメンバーなので、中長期の視点が大事なのは体感でわかっている。たとえば、「Yahoo! BB」(インターネット接続サービス)を当時あれだけの赤字を出してやったからこそ今のネット環境があるわけで。ただ、そういう体感値は普通、代を引き継ぐごとに薄まる。すると、近視眼的な経営に陥るリスクは高まる。

──きちんと中長期視点で経営できる次のトップを育成するのが、現体制を通じて川邊さんが達成しなければならないことであると。

そうだ。経営のテーマが変わるごとに代が替わるというのが健全だと思うので、ヤフーでは今後もこの路線を変えずにいきたい。そのためには、設定したテーマを達成できるような胆力、人望、具体的スキルを持った経営者を、そのときどきで輩出できなければならない。そういう教育のシステムやデザインをもった会社であり続けたいと強く思う。

──経営や組織作りという観点で、川邊さんが注目されている会社や、実際にこの会社のこういうところを取り入れた、といった事例はありますか。

業界内外、継続的に成長している会社を幅広く見ている。たとえば、ソフトバンクはスピードをすごく重視していて、それに沿う人材や組織の育て方が非常に参考になる。サイバーエージェントだと、若い人たちを抜擢して、権限を与えて、そういうモチベーションで事業を引っ張っていくノウハウがすごい。藤田さんに直接話を聞いて、マネした部分がいっぱいある。リクルートのホールディングス化も一時期すごく研究した。うちは完全に分社化したわけではないが、カンパニー制を敷くのに非常に役立った。

孫正義とヤフー、事業の話だけを突き詰めた20年間

川邊氏はソフトバンクの孫正義社長とほとんどプライベートの話をすることはなく、話題はもっぱらビジネスにかかわる話だという(撮影:今井康一)

──ECやスマホ決済の取り組みを中心に、近年筆頭株主のソフトバンクとの事業連携が加速している印象です。孫さんとは普段、どんなやり取りをされていますか?



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