ネット事業の仕掛け人、投資家と起業家の2つの顔 – 日本経済新聞

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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

ライブ配信アプリの17Media Japan(東京・港)を率いる小野裕史社長(44)はこれまでに9つのネットビジネスを興してきた事業立ち上げの「仕掛け人」だ。ベンチャーキャピタル(VC)も経営し、海外で伸びている事業モデルをいち早く日本に持ち込む。起業家と投資家の両者の視点で磨いたビジネスセンスを武器にスタートアップを成功に導く。



小野裕史氏

小野裕史氏

ピザの生地を回す技を披露する職人や若い人とおしゃべりする70歳のおばあちゃん――。スマートフォン(スマホ)でライブ動画を配信するアプリ「17Live」には多様な人物が生出演している。視聴者は感想を投稿したり、「投げ銭」と呼ぶアプリ内の通貨を送ったり、双方向のコミュニケーションを楽しむ。

台湾発の17が日本でサービスを始めたのは2017年9月。業界では後発だったが、約1年で報酬を支払う出演者数で約7000人と国内最大規模に育った。東京・青山にある日本法人には20代の若手社員を中心に約85人が働く。小野氏は社長として組織を率いる。

台湾のアプリに単に翻訳するだけでなく、日本の文化に合わせて様々な工夫をしていると言う。幅広い年齢層に対応した出演者をそろえ、20代以外が約40%を占める。「スマホを通じて誰でも表現者になれる世界を作る」のがビジョンだ。

小野氏が同社の社長に就いたのは、15年に自身が代表を務めるVCのインフィニティ・ベンチャーズ(東京・港)を通じて親会社の台湾企業に出資したのがきっかけだ。「日本進出を手伝ってもらえませんか」。17年春、相談を受けた小野氏はまず日本のネット大手に提携を打診した。だが、時間がかかりそうな雰囲気で、それならと社長を引き受けた。

小野氏とネットビジネスとの関わりは約20年前に遡る。コンピュータープログラミングに興味を持ち、NTTドコモの携帯ネットサービス「iモード」向けのサイトを制作した。2000年に大学院を卒業し日本IBM系のシステム開発会社に就職したが、わずか5カ月で退職した。

「社員が足りないので手伝ってほしい」。サイバーエージェント子会社でシーエー・モバイル取締役(当時)の石川篤氏(42)に誘われ、同社に入社。個人の携帯サイトで収益を稼ぐことができるモバイル広告事業を作った。その後も様々なコンテンツやサービスを立ち上げ、専務取締役として成長をけん引した。

転機は08年。以前から巨大市場の中国でモバイルビジネスを展開できたら面白いと考えていた。中国に豊富な人脈を持つ田中章雄氏(48)と出会い、日本と中華圏のスタートアップに投資するVCを創業した。

同年に設立したRekoo Japan(東京・港)は中国で人気のパソコンゲーム「サンシャイン牧場」を日本にいち早く持ち込み、ミクシィを通じて配信した。半年で約600万利用者を獲得しソーシャルゲーム時代の幕開けを飾った。

3つのファンドで総額200億円を運用。海外市場で伸びそうなビジネスの種を見つけ、成功要因や背景を分析、日本の市場特性も考慮して適切なパートナー企業や経営者を見つけ、一緒に立ち上げる。「株主というより共同創業者に近い」。自らが事業を立ち上げてきた経験があるからこそできる投資手法だ。

例えば10年に投資した共同購入型クーポンを展開するクーポッド(現グルーポン・ジャパン、東京・港)。米欧でクーポンサービスが流行したのを見て、国内でも類似サービスが急増していた。小野氏は「美容室などを開拓するにはリアルな営業網が重要」とみて、全国規模の営業組織を率いた経験を持つ広田朋也氏(元会長)に声をかけ共同で創業した。

設立2カ月後には米国のグルーポン本社から「出資させてほしい」と提案があった。営業組織を一気に700人規模まで拡大し、「クーポン戦争」に勝ち残った。

中古品の売買サイトを運営するジモティー(東京・品川)、英国に本社を置くブランド品通販のスタートアップ「ファーフェッチ・ジャパン」の日本法人も代表として立ち上げた。

小野氏はもう1つの顔を持つ。馬術の耐久レース「エンデュランス」競技の日本代表選手で、18年9月には米国で開かれた世界大会に出場した。

起業家、投資家、騎手の3足のわらじ。いずれも短期の努力で結果が出るものではない。「継続してトレーニングすることで結果につながる確率を上げられる。事業をつくって成長させるだけでなく、人間として成長を重ねたい」と語る。  (鈴木健二朗)

[日経産業新聞 2018年10月22日付]



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