定住・交流・関係人口/島根暮らし あの人、この人 – 山陰中央新報

Home » 起業・独立 » ビジネスプラン » 定住・交流・関係人口/島根暮らし あの人、この人 – 山陰中央新報
ビジネスプラン, 起業・独立 コメントはまだありません



元JC総研客員研究員  黒川 愼司



 72歳になる幼なじみの「たあちゃん」が、江津市波子へ単身でUターンして5年が経過します。たあちゃんは奥さんと話し合い、千葉と島根の「分居」を選択しました。母親の死で「家と墓」を守る人がいなくなったのが動機です。これを「分居型終活Uターン」と私は呼びます。

 このUターンで波子に私の泊まる場所ができ、年に6回以上、行きます。たあちゃんが、私と江津を「交流以上、定住未満の関係人口」として結んでくれました。

 島根県の推計人口月報によれば、昨年4月1日現在の県人口は68万4888人。今年が68万252人で4636人の減です。

 人口減少の歯止め策としてU・Iターン者の確保が重要と言われます。その実績ですが、2016年度はU・Iターン者合わせて4376人。17年度は4116人と260人のマイナスとなりました。しかし、年代別では、20~39歳が2042人と半分を占めているのは明るい材料です。

 「観光とは『光を観に行く』こと。大阪出身のよそ者の目で見ると、美保関には光が多数あります。その光を発信し、一人でも多くの人を美保関に招きたい」と住吉裕さん(57)は話します。

 住吉さんは、日本航空山陰支店長として松江に8年前に赴任しました。ところが、その住吉さんの現職は松江観光協会美保関町支部の事務局長です。気に入った松江に住み続けるため、この職に就いたとのことです。

 観光で交流人口づくりに取り組む住吉さんの場合を「よそ者型Iターン」と名付けます。

 浜田市在住のローカル・ジャーナリスト、田中輝美さんの著作に「よそ者と創る新しい農山村」があります。田中さんは、江津市で展開されたビジネスプランコンテストを紹介し、人口減少地域では、よそ者を積極的に受け入れ、その知見と行動力を活用すべきだと提起しています。

 しかし、そのよそ者に「定住を強いないこと」を挙げています。なぜならよそ者は、その地域の課題をどう解決するのかに関心があって、課題解決にめどがつけば、風のように吹き去っていく「風の人」。それを承知で接することが肝要だといいます。

 高校野球監督の大庭敏文さん(37)は益田東を率いて18年ぶりの夏の甲子園出場を果たしました。

 大庭さんは大阪府八尾市出身です。中学3年の時に益田東の甲子園出場をテレビで見て、さらにその学校が祖父の家がある津和野町日原の隣だったことが契機で益田東に進学。大阪体育大を卒業後、母校の教員として益田へ「ダブルIターン」しました。

 野球部は県外出身者が圧倒的で「よそ者部隊」と批判する人もいます。こうした中で「親代わりとして、叱る時はきちんと叱って、益田の子として育てています」と話します。生徒は3年間の期間限定ですが、立派な島根代表だと私は歓迎します。

 最近、若者の間に「田園回帰志向」が高まっていると日本農業新聞が報じています。18年前に島根県津和野町の山村へやって来た田中海太郎さん(44)は、その先取りです。今は妻に子ども3人。福岡から母親もやって来て、3世代6人暮らしです。

 これを「挙家型Iターン・田園回帰バージョン」と名付けました。

 人口減は、地域で一人一人の役割、存在感を増します。県内には紹介した以外にも多様なU・Iターン者がいます。この移住者と手を携えて「人口は少なくても、きらりと光る島根県」をつくりたいものです。

 …………………………

 くろかわ・しんじ 1946年、江津市波子生まれ。早稲田大第一文学部卒。JA島根中央会で農政、広報、青年組織などを担当。2016年3月までJC総研客員研究員。松江市在住。



コメントを残す