跡継ぎがいない…事業承継に悩む企業のウルトラCとは? – MONEY PLUS

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実家に帰る方も多いであろうお盆の時期に、ぜひとも考えておきたい相続に関する問題。名義預金についてまとめた第1回目に続いて、第2回目は「事業承継」に関するお話です。



日本の会社のうち、99%を占める中小企業。実家が商売をしている方も少なくないと思います。では、その代表者に万が一のことがあったら、会社はどうなるのでしょうか。


代々続いた家業を残したい

「お金のことより、『誰が継ぐか』を決めるまでが大変でした」

そう振り返るのは、都内在住の佐藤友子さん(55・仮名)。昨年、実家の事業承継を経験しました。

実家は代々林業を営む家系で、某県の山間にあります。周辺一帯の山林を守りながら木材加工会社を営み、一時期は従業員も30名ほどを抱え、地元でも有名な会社だったそう。その3代目社長であった父親が亡くなり、会社の後継者問題が浮上しました。

佐藤さんは弟との2人姉弟。2人とも大学進学と同時に家を離れ、卒業後は東京で就職しました。そのまま結婚し、子供が生まれ――。家を離れて30年以上、自身の子供たちも成人しましたが、今さら実家に戻るのは現実的ではありませんでした。

林業はただでさえ重労働です。佐藤さんは残された母親を思い、木材加工会社は廃業し山林も売却してはどうかと提案しました。しかし、「代々継いできた生業と土地を手放すことはできない」と、母親は頑として譲りません。

「生涯現役」を宣言していた父親の傍ら、会社の金庫番として家業を支えてきた母親。「跡取りがいないのなら、自分が社長をやる」と言い出しました。しかし母親も75歳と高齢、いつ何があるかわかりません。佐藤さんは、どうにか会社を存続させる策を模索することになりました。

政府による事業承継支援

佐藤さんの実家のような非上場企業オーナーの場合、相続時には、社長という役職の交代だけでなく、会社の株式もいずれかの人間に承継する必要があります。しかし、その株式評価額が高い場合には、それに伴って相続税額も多額になります。過去にはこの相続税が払えず、事業承継を断念するケースが多かったそうです。

そこで政府は、中小企業オーナーの相続・事業承継の円滑化を目的として、後継者が納めなければいけない相続税もしくは贈与税の納税を猶予する制度を2009年度にスタートさせました。この制度の適用を受けると、事業が引き継がれる際に発生する相続税もしくは贈与税が猶予されるので、後継者にあたる方が事業を引き継ぎやすくなります。

しかし、この制度を利用すると、最低5年間は事業を継続しなければいけません。高齢の母親が社長になったとして、5年間頑張れるのか。頑張れたとしても、近いうちにまた次の後継者が必要になってきます。ならば今ここで廃業してしまったほうが……。

考えあぐねた佐藤さんと家族。そこに、思いがけないところから手が挙がったのです。

名乗り出たのは佐藤さんの長男、幸樹さん(25・仮名)。都内で就職していましたが、会社を辞め、後を継ぐと名乗り出ました。「もちろん、最初は反対しました」と佐藤さん。しかし本人の意思は固く、なにより孫が継いでくれると聞いた佐藤さんの母親は、泣いて喜んだそうです。

幸樹さんはこれまで林業に携わったことはありません。ですので、すぐに社長として事業を承継する のは無理があります。そこで当初の想定どおり、まずは母親が父親から相続する形で社長職と会社の株式を承継します。幸樹さんは会社に従業員として入り、林業を学びながらの後継者修行を受け、しかるべき時に祖母から孫への事業承継を行うという流れです。

税制改正でさらに使いやすく

今回のケースについて、大和証券のウェルスマネジメント部寺田さんに話を聞きました。

寺田さん: 納税猶予制度を利用する場合、その法人や後継者に求められる主な要件としては以下のようなものがあります。


(1)中小企業基本法の中小企業者であり、資産管理会社ではないこと
(2)非上場会社であること
(3)風俗営業会社ではないこと
(4)後継者となる人が、相続開始日の翌日から5ヵ月を経過する日において、代表権を有していること
(5)同族関係者で総議決権数の50%超を保有し、かつ、同族関係者の中で筆頭株主であること

この納税猶予制度ですが、 近年の改正により、使いやすくなってきています。この制度の創設当初は、後継者が先代経営者の親族でなければ利用は難しかったのですが、要件が緩和され、事業を続けることができる方、たとえば従業員の方が後継者になる場合にも、この制度を使うことができるようになりました。

さらに2018年度の税制改正では、この納税猶予制度の特例措置が創設され、相続税の全額が猶予されるようになるなど、より活用しやすくなっています。佐藤さんの息子さんのような“ウルトラC”がなくても、幅広いケースにご利用いただけます。

また、先代経営者の方が亡くなる前に贈与の形で事業承継する場合も、納税猶予措置を受けることができます。いずれのケースでも定められた期間内に都道府県へ申請するとともに、税務署への申告手続きが必要です。

なお、制度利用後の一定期間は税務署に「継続届出書」の提出が義務付けられています。細かな手続きは会社の状況によっても変わってきますので、詳細は税理士の方にご相談ください。

孫が後を継いでくれることになり、佐藤さんの母親もがぜん元気になったそう。「もともと自然が好きな子でしたので、なんとか頑張ってもらいたいと思います。私たちも影ながらサポートしていこうと思います」と佐藤さん。

地方企業の多くが後継者不足に悩んでいます。佐藤さんのようなケースは珍しいとは言え、家族全員で話し合ったからこそ見つけた解決策です。先祖を祀るお盆の時期、ちょっと家族で話しておくと、解決の糸口が見えてくるかもしれません。

(文:編集部 瀧六花子)



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