「共創」で社会の課題解決 地域活性化/被災地支援 – 読売新聞

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 「共創」という名を冠した取り組みや学部が大学で増えている。多様な人々とともに新たな価値の創造を目指すという。学生たちは何を学び、どのような力を身につけようとしているのだろうか。



                                            (編集委員 沢田泰子)

 ◇産官学民

 7月下旬の土曜日、大阪府池田市の市役所に、大阪大の学生や教員、市職員、住民、会社員や経営者ら約30人が集まった。阪大が池田市とともに始めた「池田市 研究×まちづくりサロン」。活発な議論から新たな研究や事業の創出、まちの活性化につなげる「産官学民共創プロジェクト」だ。

 テーマごとに6グループに分かれ、自己紹介の後、池田市の現状や将来像について話し合った。市北部の細河エリアを担当するグループでは、地元の農業吉岡博充さん(44)が、植木の栽培が古くから盛んだが、高齢化で耕作放棄地もある現状を説明。市職員の小林洋治さん(33)が「住民だけでなく、交流人口を増やすことが課題」と指摘すると、阪大法学部3年塩見莉那りなさん(21)が「都心部から近くて気軽に行ける。写真映えすれば訪れる人は増えるのでは」、外国語学部2年瀬戸崇之さん(20)は「盆栽は海外で注目されている。世界からの観光客を呼び込んではどうか」と提案した。

 参加者は大学のホームページなどで募集。将来、国の政策づくりに関わりたいという塩見さんは、「国の政策も地域の集約。身近な地域の魅力や課題を知りたい」と参加した。瀬戸さんは「庭という日本独自のアートを世界に発信して、植木産業を盛り上げる」と意気込む。グループごとに今後も現地を訪ねるなどして議論を重ね、新たな研究構想とビジネスプランをまとめ、11月下旬頃に発表する。

 阪大は産業界との連携や社会貢献を担う組織を改編し、今年1月に共創機構を設置。学外機関と協力して新たな事業を進めている。まちづくりサロンを企画した共創機構の中村昌平・リサーチ・アドミニストレーター(32)は「大学は深い研究が強みだが、それぞれの領域は狭い。変化が速い時代には多様な分野の人と互いの強みを理解し合い、協力する力を養うことが不可欠。学内と社会をつなぐ場を提供していきたい」と話す。

 

 ◇学部・学科も

 「共創」と名のつく学部や学科も増えている。

 今春、共創学部を設置した九州大。地球環境問題や宗教・民族の対立など地球規模の課題に取り組む人材の育成を目指し、チームで課題を解決する力や、英語で意見を述べる力の向上に重点を置く。初年度は105人の定員に国内外から486人が志願。小山内康人学部長(61)は「現代の課題は様々な要因が複雑に絡み合って生じており、解決には多様な文化、言葉の壁を越えた協働が求められる。こうした問題意識をもつ学生が全国から集まった」と手応えを語る。

 広島大が今春、総合科学部に開設した国際共創学科(定員40人)も国際的な課題を解決する力の育成を掲げ、全ての授業を英語で受講できる。

 2016年度に愛媛大が開設した社会共創学部(同180人)では、人口減少問題などに直面する地域社会を持続可能な発展に導くことを目的にし、理論とともに地域での実践に力を入れる。西日本豪雨で大きな被害を受けた愛媛県の被災地を支援するため授業の内容を変更して壊れたビニールハウスの撤去などを行った。学生は夏休み中もボランティア活動を続けている。

 西村勝志学部長(59)は「誰と何を共に創るかで、共創の範囲は異なるだろう。愛媛大では他府県や世界の地域に共通する問題の解決に貢献できる人材を養成していく」と話している。

 

 ◇学外と連携共に知を創出

 「共創」という言葉は経済界などで以前から使われてきた。金沢工業大や産業界の関係者らが2000年にまとめた『場と共創』(NTT出版)では、平等で異質な者が集まり、共通の目的をもって同じ場の経験を重ねることで新しい方法をつくり出せるとする。04年にハーバード・ビジネススクール・プレスから刊行された原書を同年に訳した『価値共創の未来へ――顧客と企業のCo‐Creation』(ランダムハウス講談社)では企業が単独ではなく、顧客とともに価値を生み出すとしている。

 「共創」を「社会と共に価値を創造すること」と定義する大阪大の西尾章治郎学長(66)=写真=は、「これまで大学は社会から示された課題に専門知識を生かして応えようとしてきたが、今後は社会と共に何が課題かを考えて基礎研究の段階から連携し、一緒に知を創出することが重要になる。大学が共創の場となることで、卒業後に社会で共創活動を進める人材を育成し、イノベーション(革新)に貢献することができる」と話している。

 

 

 

 ■学生・教員の起業支援

 関西大(大阪府吹田市)は9月、学生と教員の大学発ベンチャーに投資する「関大起業資金支援制度」をスタートさせる。

 関大は計5000万円を用意。学生や教員からの申請を受けて、運営委員会で事業内容を審査し、資金を信託するりそな銀行から出資を行う。教育的な支援に重点を置き、資金回収を最大の目的にせず、事業化が十分に保証されていない段階でも起業支援を行うことが特徴だという。

 芝井敬司学長は「失敗して資金回収できない場合もあると思うが、若い人たちに志を持って取り組んでもらえる制度にした」と話した。

 

■国産紅茶を商品化  

 神戸女学院大(兵庫県西宮市)の学生が、地元の企業と連携して国産紅茶を商品化した。大学近くのカフェで販売している。

 人間科学部の4年生12人がゼミの活動で、食品の健康への影響を調べ、老化防止の効果があるとされるポリフェノールを多く含む紅茶に着目。発酵食品会社(同市)と連携し、鹿児島県産の紅茶「べにふうき」を使った商品を開発した。ストレートティー(7袋700円)と、イチゴのフレーバーティー(8袋630円)の2種。今月4~5日のオープンキャンパスで試飲会を行ったところ、「紅茶の渋みが少なく飲みやすい」と好評だったという。

 

 

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