追悼、トム・ウルフ 彼はノンフィクションを“再創造”した文学的イノヴェイターだった – WIRED.jp

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作家でジャーナリストのトム・ウルフが2018年5月14日に亡くなった。『虚栄の篝火』などの代表作で知られるウルフは、ニュー・ジャーナリズムの旗手としてノンフィクションに文学的な技法を取り入れたことでも知られる。『WIRED』UK版の編集長であるグレッグ・ウィリアムズが、その革新性を振り返った。

TEXT BY GREG WILLIAMS

EDITED BY CHIHIRO OKA

WIRED(UK)

Tom Wolfe

ニューヨークのアッパー・イースト・サイドにあるトム・ウルフの自宅アパートメントにて、2004年10月に撮影。PHOTO: DAVID CORIO/REDFERNS/GETTY IMAGES



トム・ウルフが5月14日に亡くなった。熱に浮かされたかのようなロココ調の散文の達人で、入念に自己像をつくり上げた作家でジャーナリストの大家であった。ウルフはものを語ることについて比類なき本能をもっており、時代を先取りし、いまを反映する様式化した“声”を生み出すことで、60年代と70年代のアメリカの変革を記した。

彼が革新的だったのは、フィクションと同じような調子で、一人称でノンフィクションを書き上げたからだ。ウルフのノンフィクションには会話や場面があり、その場の空気感も伝わってくる。記述は臨場感に溢れ、会話のトーンからナラティヴの背景や設定まで描き込まれていた。

ウルフやほかの多くの書き手たちは、ジャーナリズムに文学的な技法を導入した。これは当時は革命的で、アメリカで起こりつつあった深刻な社会変化に適応する動きだった。

ウルフの作品は「感情」を引き起こすことを目指していた。実証に基づき断固として事実を追求することで真実への到達を目指すジャーナリズムではなく、記述対象となる事柄にのめり込み、生き生きとした描写や不規則な視点を取り入れたジャーナリズムだったのだ。

ニュー・ジャーナリズムの旗手として知られる作家たち(ウルフ、ジョーン・ディディオン、ジョージ・プリンプトン、リリアン・ロス、ゲイ・タリーズ、リチャード・ベン・クレイマー)は散文を解体し、スタイルと戯れながら再構築しようとした。ごちゃごちゃとしたビザンチン風の文に型破りな方法で句読点を付け、読み手の心に熱く訴えかける文章を魔法のように生み出したのだ。

いまになって考えると不思議に思えるが、かつて(それほど前ではない昔だ)、小説が文化を支配できる時代があった。今年の初めに、マイケル・ウォルフがトランプ政権の内幕を暴露した『炎と怒り』が話題をさらったようなやり方でだ。

1987年に『虚栄の篝火』が出版されたとき、アメリカ人の人種や金、野心への執拗なこだわりを描いたこの物語は80年代のニューヨークの壮大な風刺で、その主題は「ステータス」だと言われた。そして、ウルフが取り上げるテーマは常に、自己や社会といったより大きいメカニズムの変容と創出に対する強い関心によって選ばれていたように思われる。

ブラックパンサー党にケン・ケーシー、チャック・イェーガーとマーキュリー計画など、ウルフは変革の中心にある人や物事に興味をもっていたのだ。彼は「シリコンヴァレーの主」と呼ばれたロバート・ノイス[日本語版記事]や神経科学の進歩、アメリカの宇宙計画について書いた。

65年にはマーシャル・マクルーハンの人物像について、『ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン』紙に以下のように記している。

皆さん、ゼネラル・エレクトリック(GE)は、その利益の相当の部分を電球から得ている。しかし、それは電球事業ではなく、情報を伝達する事業なのだということに、彼らは気づいていない。AT&Tと同じだ。そう。モチロン-ワタシハ-ヨロコンデ-シンボウシヨウ。顎を引いて、スコットランドの地主のような無骨な顔で見上げる。そう。電気の光は純粋な情報だ。それそのものがメッセージを欠いたメディアなのだ。そう。光は自己完結するコミュニケーションシステムで、メディアそのものがメッセージになる。少し考えてみてほしい(ワタシハ-ヨロコンデ)。IBMが自分たちは事務機器やビジネスマシーンをつくっているのではなく──

情報を
処理する
ビジネスをしているのだ
ということを発見すると、
明確な
ヴィジョンをもって
戦略を
決めるようになった。
そう。

素晴らしい! それにしても、この男はどこからやってきたのだろう? この謎めいたデルフォイの神託のような「電気の光は純粋な情報である」という言葉は何なのだろう?

デルフォイの神託! メディアはメッセージである。わたしたちは視覚の時代から、聴覚と触覚の時代へと移行しつつあるのだ…

ウルフは心と直観と言語的な想像力を用いて書いた。テクニカラーで見たものを文章で記録したのだ。

ウルフは亡くなったが、色あせることのないノンフィクションの名作の数々と1編の壮大な小説、190箱に及ぶノートや手稿、仕立て屋からの請求書、絵葉書(2013年にニューヨーク図書館が購入した)が残された。

そして、酔ったように高揚した非凡で独特な声も。



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