「渋銀」が融資に踏み切った夢物語-最長の観光つり橋、静岡の名所に – ブルームバーグ

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右手に富士山、左手にはエメラルドブルーに輝く駿河湾。静岡県三島市にある「三島スカイウォーク」は2年前にできた観光つり橋だ。地元企業が静岡銀行の支援を得て建設した日本最長(400メートル)の歩行者用つり橋で、いまや地域振興の一翼を担うまでになった。



  「美しいでしょう。富士山は右側が膨らんで見える場所が多く、末広がりの完全形が見られる所は珍しいんですよ」と、スカイウォークの岩井大支配人(40)は胸を張る。橋の下に川はなく、絶景を楽しむためだけの建築物だ。パリから来ていたエイドリアン・スレさん(29)は「富士山はエッフェル塔と同じぐらい有名だ。フランスに帰ったら皆にここを勧めたい」と話した。夏にはアスレチック中心の新エリアが完成予定という。

静岡銀の大橋常務。「三島スカイウォーク」の前で。

Photographer: Takako Taniguchi/Bloomberg

  静岡銀といえばかつて「静銀ならぬ渋銀」と言われるほど厳格な融資審査で知られた銀行だ。そこが海の物とも山の物ともわからないアイデアを事業計画に落とし、融資を組み、実現させていった背景には一人の銀行マンの熱意と、必要ならリスクを取ってでも地域振興を図っていかなければならないという同行の危機感があった。

  スカイウォークを経営するフジコーは地元の娯楽施設運営会社。宮沢俊二代表取締役がハイキング中に偶然絶景を見つけ、有料つり橋で観光客を呼ぶアイデアを思いつく。しかし観光目的の橋に民間企業が巨費を投じる例はなく、誰も取り合わなかった。転機は09年にやってきた。当時同行三島支店長に就任したばかりの大橋弘氏(現常務)があいさつで訪れたフジコーの社長室でつり橋の想像図に目を留めた。「それは何ですか?」

熱意

  大橋氏(60)は熱く夢を語る宮沢氏に「ぜひ実現しましょう」と約束した。ところが審査担当は採算性を疑問視して一蹴。大橋氏らは先行する大分県・九重町の公営観光つり橋を参考に収支予測を作り、毎週本店に通った。審査担当者を九重町まで連れて行き実物を見せたりもした。結局、同行は事業計画に可能性を見出し、追加融資を含め総事業費40億円の半分超の融資をアレンジした。岩井支配人は「夢物語に本気で付き合ってくれた。彼らがいなければこの事業は成り立っていない」と振り返る。

  スカイウォークには15年末の開業以来、300万人が来場。静岡県の統計によると、16年度に三島市の施設やイベントを訪れた観光客は758万人と前年度比20%(129万人)の大幅増となり、県は「スカイウォーク効果」と分析している。岩田支配人によると事業は現在黒字で、入場者数は10年で1000万人が目標。達成にはリピーターの獲得が不可欠で、新エリア増設もこうした魅力アップの一環だ。

課題

  少子高齢化が進行する中で、地方の活性化は容易ではない。特に東京、名古屋という大都市に挟まれた静岡県は人口流出が深刻だ。静岡銀は15年に「地方創生部」を新設。16年には県境を越えて横浜銀行と連携、富士・箱根・伊豆の観光振興で協定を締結した。静岡銀の大橋氏は「県境を越えた広域への目配りや行政との太いパイプがある地銀こそ、地域創生金融の担い手にふさわしい」と考えている。

  また大橋氏は「これまで短期の、半期ごとの業績評価に偏り過ぎていた。人口減少時代の地銀の使命は、地域活性化で中長期的に地元におカネが落ちる仕組みを作り出すことだ」と話す。静岡銀では17年度から人事評価の方法を改め、融資実績などの結果だけでなくプロセスも評価する制度の試行を始めた。事業承継、地方創生などに取り組みやすくする工夫だ。

  課題もある。地域創生への取り組みが必ずしも収益拡大に直結していないことだ。地銀協のまとめによると、地銀の2016年度の創業支援融資は前年度比36%増の8340億円。伝統的な担保・保証依存からの変化の一指標として、動産・債権を担保とした融資額は12年以降毎年増加しており、16年には6倍超の1兆2957億円となった。一方、地銀全体の決算を見ると、貸出金利回りは10年前の半分の水準に落ち込み、本業の儲けを示すコア業務純益は同29%減の1兆660億円となった。

  地銀の地方創生について、松井証券の田村晋一ストラテジストは「物足りないとの批判も分かるが前向きに評価したい。役所は目利き力を発揮しろと言うが、地銀の融資は預金が原資のため、貸し倒れは困る。リスクを取らずに収益化案件などそんなに拾えない」と指摘。メガバンクが店舗数の削減方針を打ち出す中、融資の担い手が地銀だけという地方都市が今後増えるとし「地銀の取り組みが地域の支持を得られれば地域経済は残る。自身が生き残るのも地域貢献だ」と述べた。



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