シアトルが構築する「AI覇権」への道 – WEDGE Infinity

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江藤哲郎のInnovation Finding Journey

2018年3月21日

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江藤哲郎 (えとう てつろう)

ベンチャーキャピタリスト

 鹿児島県出身。1984年慶應大商学部卒業。同年(株)アスキー入社。86年マイクロソフト(株)設立に参加し、マーケティング部長代理としてWindowsコンソシアム、マルチメディア国際会議等を立ち上げる。

 92年(株)電通入社後、デジタル・コンテンツの開発とビジネス化を推進。2002年から情報システム局でSAPアジア共通会計システムを中国・アジアの30拠点に導入他、国内外の全システム開発を担当。2013年から経営企画局専任局次長として、電通が約4,000億円で買収したイージスとのグローバルIT統合の責任者。

 2015年7月、ワシントン州カークランドにInnovation Finders Capitalを設立。AI、ビッグデータ等スタートアップを日本と繋げる。家族は妻と一男。

 

[執筆記事]

 年明けからシアトルではAIで世界的に影響を及ぼす話題で持ち切りだ。アマゾン、マイクロソフト、勃興するAIスタートアップ、そしてワシントン州政府の動きを全米やシリコンバレーの動向と比較しながらレポートしたい。


全米で最もクレーンが多い都市がシアトル。建設ラッシュが続く ©︎Naonori Kohira


 先月BEA(連邦政府経済分析局)が発表した2017年第3四半期の経済成長率は衝撃的なものだった。ワシントン州の実質経済成長率が4.3%に達したのだ。同州はカリフォルニア州の3.4%を超え、西海岸で最も成長している州になったわけで、この成長の3分の1は情報産業セクターがもたらし、それにはアマゾンとマイクロソフトが大きく寄与している。ちなみに同時期で全米のGDP成長率は3.2%で、情報産業セクターのみだと9%とハイレベルな成長を続けている。


 ここシアトルで見ていると、この成長はこれからも継続すると確信できる。シアトル市内や郊外のレストランはどこも賑わい、マンション需給も逼迫。建設ラッシュが続き、町中巨大クレーンと工事現場とだらけでここは上海かと見紛うほどの光景だ。その3分の1は、アマゾン関連のオフィスとその社員向けマンション建設らしいという噂にも納得してしまう。アマゾン村と呼ばれるサウスレイクユニオン地区は通勤時の渋滞が悪化し、帰宅に1時間以上要する社員も増えている。同社が第2HQ構想を発表したのも当然のことだが、今年はその選定結果が発表されるので全米で大きなニュースとなるのは間違いない。


 アマゾンウェブサービシズ(AWS)は、昨年10月ラスベガスでのプライベートショー「re;Invent」を開催し、日本の法人ユーザーも含め世界中からの参加者に対し、革新的なサービスを多数発表した。中でも「Guard Duty」は最も注目すべきAWS用サイバーセキュリティーサービスで、これは、今までamazon.comのEコマースのみのために開発されていたセキュリティーシステムをAWSユーザーに提供するもの。


アマゾン新社屋群には各ビルにドッグランがあり、受付には無料のドッグフードも ©︎Naonori Kohira


 実はこのGuard Dutyも裏でマシン・ラーニング(ML)が走っていて、ゼロデイアタックにも確実に対応できるようになっている。1月末にシアトルで行われた関係者向け説明会でもこのMLの詳細に関しては明らかにされていないが、マイクロソフト同様世界で最もサイバー攻撃の対象となっているアマゾンが、そのノウハウとリソースをフル活用して開発運用しているシステムをついに外販し始めたという事実は、正にゲームチェンジャーになり得る動きと言える。


 ゴールドマンサックスは、全てのオンプレサーバーからAWSへの以降が完了し、いよいよクラウド・オンリーの運用フェーズに入った。グローバルな金融大手が採用したことは、これまでマシンルームに設置したオンプレミスサーバーの方が安全だとされていた神話の終わりの始まりかもしれない。


 4月のAWS Summitでも大型の新規サービスが発表予定とされ、その直後から世界27カ国でこのSummitのロードショーが計画中で、日本でも東京と大阪で開催される。AWSはこれらの全サービスを世界レベルで提供し、ユーザーはAIやセキュリティの最新サービスを享受することになる。


 同社は世界各国でチャネルパートナープログラムも進めており、もし日本のSIベンダーでAWSジャパンとパートナーシップの話をしていない場合はリストに入っていない恐れがあり、ここでもまた違った意味でのアマゾン効果が及んでいる。2月からスタートした無人コンビニのAmazon Goを見ても、世界市場に対し非常に大きなインパクトがあるイノベーションが続々と生み出されていて、目が離せない。




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