イタリアの商店<第31回>「ちょっと昔のキャンティ」を多くの人に – 朝日新聞

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 「ラ・プロシュッテリア」という看板を掲げた店が少し前、筆者が住むシエナの街にできた。prosciutteriaとは、直訳すればハム店である。だが、のぞいてみると生ハムをつまみの中心に据えたワインバーだった。


 聞けば、フランチャイズ店だった。本部メンバーのひとりが取材に応じてくれるという。さぞ“社長風”の人かと思って待っていると、現れたレオナルド・テッレーニさんは、学生街シエナで大学生に交じっても違和感のない雰囲気の人だった。


 レオナルドさんは今年29歳。フィレンツェ大学で哲学を専攻しているとき、キャンティ地方(トスカーナ州)にあるワイン農園を実家にもつ仲間が立ち上げた新スタイルの食堂計画に参画した。


 「サラミ、ワインといった地域の伝統的な風味を、昔ながらのムードの中でお客さんに楽しんでもらうのがコンセプトでした」


 小さな田舎のコミュニティーを再現すべく、今日イタリアではあまり馴染(なじ)みのない「相席」もお客さんに薦める。ただし、いまだ値段表がないことも多い従来の立ち飲み食堂とは一線を画し、現代的な全店統一の明朗料金とした。


 それらが好評を得て今日、フランスのビアリッツ店も含め13店舗までフランチャイジーを増やした。フランチャイズというと画一的な店舗デザインが頭に思い浮かぶが、ラ・プロシュッテリアの場合、それは無縁だ。


 什器(じゅうき)はキャンティの古い民家から放出されたものを丹念に集めている。テーブルにしても、同じものがひとつとしてない。さらに、多くが歴史的旧市街に立地するため、店によって間取りが大幅に違う。たとえばシエナ店は開業準備中、突然発見された地下室をそのまま使っている。


 「いちばん古い部分は、紀元300年から400年のものです」


 入った途端、地下室独特の湿った匂いと、生ハムの香りに誰もが包まれる。


 長い歴史をもつイタリアゆえ、つい見落としてしまう「ちょっと昔」。それをビジネスにした、若い起業家たちならではのアイデアである。



(文 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA/写真 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA・大矢麻里 Mari OYA)

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